Startup Company
2018/1/19
投資先ストーリー
08

IGS(Institution for a Global Society)
代表取締役社長 福原正大 インタビュー

AI支援で実現する教育&人材活用の新時代

優秀な日本の人材が、なぜ世界で活躍できないのかーー。
教育への危機感から、AIとビッグデータを活用した
革新的な人材評価ツールを開発し、注目を集めるIGS。
その目覚ましきシェア拡大の先にあるものとは?
『学問のすゝめ』の教えを胸に切り拓く、
多様性と創造性あふれる未来へのビジョン。

AI支援で実現する教育&人材活用の新時代 – IGS(Institution for a Global Society)

AIを活用し、人材評価と教育の新時代を切り拓く

弊社の目的を一言で表現するなら、世界で活躍できる人材を発掘し、その才能を伸ばしていくこと。現在は主に、人材の評価と育成を担う「GROW」と、オンライン英語学習システム「e-spire」を展開しています。

いずれもAI(人工知能)を活用した事業ですが、「e-Spire」は、文科省の方針でも打ち出されている英語4技能(リーディング/ライティング/リスニング/スピーキング)を高めるために、AIによる自然言語処理と機械学習、ディープラーニングを組み合わせたeラーニングのサービスです。

一方で「GROW」のビジョンは、新たに“人を幸せにする人材評価”の基準をつくること。いまの日本の仕組みでは学歴に象徴されるように、極めて単純化された基準で人間の価値が決められてしまう。また、日本ではこの数十年間、時代に応じた教育変革が行われないままですが、それが日本の国際的な競争力を大きく弱めている。日本でもグローバル水準の“教育”を実現するために、まず“評価”のあり方を変えようと考え、この事業に取り組みました。

私自身の大きな転機となったのは、フランスの経営大学院INSEADで学ぶ中で、「日本人は優秀なのに、海外へ出るとその能力を発揮することができないケースが多いのは何故だろう?」と考えたこと。一方で、統計学をはじめ金融工学や計量経済学などを学ぶ中で、「統計学は企業評価には応用されるのに、企業を形作っている人の評価に適用されないのは何故だろう?」という疑問を抱きました。そこから、統計学を応用したAIを使えば、人間の能力や可能性を正しく評価できるようになるかもしれないと考えたのです。

日本における評価の機会は主に、高校入試、大学入試、就職活動。その最後となる就職活動では書類選考や総合適性検査が行われますが、これらはAIのように利用者に合わせた最適化がなされないルールベースの評価であり、採用後の成長や変化に対する分析もなされません。そこでさまざまな大学の研究者たちとともに新しい評価づくりに着手し、それを独自開発のサービスとして社会へ広げていこうとしているところです。

革新的な人材評価サービス「GROW360」の展望

ここで、新卒採用評価ツール「GROW360」の特長についてお話ししましょう。使い方としては、学生はスマートフォンアプリから簡単に入力ができ、友人同士の相互評価などを行います。その際の回答内容や指の動きなどをさまざまな角度から解析することで、論理的思考力や外向性、創造性までもが可視化され、企業とのマッチングを行う仕組みです。

どのように人が行動し、成果を出すかを考えるには、気質、コンピテンシー(行動特性)、スキルなど、さまざまな要素の関係性を解析する必要があります。遺伝子レベルで人の思考とつながっているのが気質です。その思考に基づく行動の特性がコンピテンシーであり、その蓄積としていちばん上のレイヤーにスキルがある。認知科学、行動遺伝学、心理学、経済学、行動経済学など、分野を横断した視点から総合的に個人の特性を分析しつつ、他者との関係性を持つ“社会的生き物”として捉え、360度から評価をしていきます。

さらにこの仕組みは、利用者が増えれば増えるほど扱うデータの総量が大きくなり、より高精度に進化していきます。アプリとしてローンチしたのは2016年の2月ですが、17年に入りANA、三菱商事や野村證券など、日本を代表する数多くの企業に採用いただき、12月時点で約13万人にご利用いただくまでに成長しました。

このタイミングでKIIから出資をいただくことになったわけですが、とくに教育関連の事業を推進していく以上、競争力や研究力のある大学のバックアップを受けられるということは、対外的な信頼などの面でも大きな強みになると思います。さらに、こうした領域は先行する成功事例が現れると一気に参入が相次ぐため、スピードを上げてトップを走り抜けなければなりません。そのためにも、しっかりとしたファンドとサポートを望んでいたところでした。

『学問のすゝめ』の理想を、社会規模で実装する試み

このように、AIやビッグデータを活用して人間の能力を分析する技術領域は「HR Tech(Human Resource Technology)」と呼ばれますが、世間的に「人間の能力をデータで推し量ることはできない」という先入観が根強いのも事実です。しかし、私たちが目指しているのはあくまで“人を幸せにする評価”であり、AIを駆使することで人間本来の可能性をさらに伸ばしていくことです。

我が国の新卒採用において、多くの企業が「学歴を問わず、イノベーティブな人材がほしい」と考えていながら、実際には学歴偏重の評価に陥っており、創造性の高い学生を取りこぼしてしまっている。人間である以上、評価する側にも必ずバイアス(偏り)が存在しており、その結果、人材の多様性を潰してしまっているのです。だからこそ私は、この技術を発展させることで、人間をより正確に評価できるバイアスフリーな世界を作り出したい。実際に「GROW360」の導入企業でも、従来の基準では見落とされていたはずの“金の卵”たちが採用されるケースが増えつつあります。

今後の目標ですが、“評価”に関わる取り組みとしては、日本のすべての大手企業に「GROW360」を採用いただくこと。と同時に、日本に限らず海外でも導入に向けて動いていきたいと考えています。また“教育”に関わる部分では、「e-Spire」を主力事業として、学校改革を目指す高校や大学への採用を広げていきたい。評価の仕組みを確立しつつ、教育を変えていきたいというのが長期的な目標ですね。

福沢諭吉の『学問のすゝめ』は、「天は人の上に人を造らず」と説きながら、「どれだけ学問を修めたかによって人には差が出る」としています。この『学問のすゝめ』の理想を、ビッグデータやAIを活用することで、社会規模で実現していきたい。2018年度からは慶應義塾大学経済学部で計量経済学系のゼミを受け持つことになり、理工学部の田村明久先生と基礎領域の共同研究にも取り組むなど、私自身も母校に大きなご縁をいただきながら、これからの教育のために力を尽くしていきたいと考えています。

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IGS(Institution for a Global Society 株式会社)
2010年設立。グローバル水準の人材育成事業を立ち上げ、AIを活用した独自開発の人材採用支援システム「GROW」、オンライン英語学習システム「e-Spire」を展開。新卒採用評価ツール「GROW360」は16年のローンチから大きな注目を集め、大手企業での採用が進む。東京とベトナムを拠点に、世界展開にも注力していく。